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必要のない不動産を相続した③《入門》 【国や地方公共団体等に寄付する場合】(20260825)

【必要の無い不動産を相続した場合、どのように手放せばよいか。】

【3】 国や地方公共団体等に寄付する。

(1) 寄付は必ず受け入れられるわけではない

     利用価値が低い、管理コストが高い、法的な瑕疵(かし)があるといった不動産は、寄付を申し出ても断られるケースが多い。

(2) 「みなし譲渡所得税」の発生リスク

      個人が法人(NPO法人等)に時価の2分の1未満の著しく低い価額で財産を譲渡した場合や、寄付(贈与)した場合、その財産の時価で譲渡があったものとみなされ、譲渡所得税が課税されるのが原則。

(3) 寄付者が負担する諸費用

寄付が成立した場合でも、それに伴う以下の費用は原則として寄付者の負担

所有権移転登記費用:登録免許税、司法書士への報酬。

       境界確定測量費用:隣地との境界が未確定の場合に必要。

       担保権等抹消登記費用:抵当権がついている場合。

       不動産鑑定費用、分筆登記費用、建物解体費用。

(4) 受け入れられにくい不動産の特徴

      以下の特徴を持つ不動産は、管理・処分の困難さから寄付を断られる可能性が高い。

      境界が未確定の土地

抵当権、賃借権など他人の権利が付着している物件

土壌汚染やアスベストなどの瑕疵がある崖地、急傾斜地、私道負担が大きいなど、管理に多額の費用が見込まれる物件

     再建築不可物件や市街化調整区域内の土地など、利用が著しく制限される物件

(5) 【寄付先別】メリット・デメリットと手続き

① 国・地方公共団体への寄付(公共の利益のために不動産を活用してもらう方法)

メリット

イ.税制上の優遇(最重要)

        国や地方公共団体への寄付の場合、一定の要件満たせば、前述の「みなし譲渡所得税」が非課税となる特例の適用を受けられます。これが最大のメリット。

ロ.管理責任からの解放

       寄付が完了すれば、固定資産税の納税義務や、土地・建物の管理責任(草刈り、不法投棄対策、老朽化物の倒壊リスクなど)から解放される。

ハ.社会・地域への貢献

      寄付した不動産が公園、道路、公共施設用地などとして活用されれば、永続的な社会貢献・地域貢献に繋がる。

デメリット

イ.審査が非常に厳しい

     国や地方公共団体は、明確な公共目的での利用計画が立てられる不動産しか原則として受け入れません。利用価値のない原野や山林、老朽化した空き家などは、ほぼ受け入れられません。

ロ.手続きの煩雑さと時間

    担当部署(国の場合は財務局、自治体の場合は財産管理課など)との事前相談から始まり、寄付採納願の提出、内部での審査、場合によっては議会の議決など、完了までに半年から1年以上かかることも珍しくありません。

ハ.費用負担

    登記費用や測量費用などは、すべて寄付者の負担となることが多い。                      

 

② 認定NPO法人・公益社団/財団法人への寄付(特定の活動分野(環境保護、福祉、文化振興など)を支援する目的で寄付する方法)

メリット 税制上の優遇

              一定の要件を満たす公益法人等(認定NPO法人、公益社団/財団法人など)への寄付も、国税庁長官の承認を得ることで「みなし譲渡所得税」が非課税となる特例の対象となる。

       国や自治体より柔軟な受け入れの可能性

            法人の活動目的と合致すれば、国や自治体では断られるような不動産(例:活動拠点としての古民家、自然保護活動のための山林など)でも受け入れられる可能性がある。

特定の目的への貢献

           自身の関心がある分野の活動を、不動産という形で直接支援できる満足感がある。

デメリット 税制優遇の要件がより厳しい

               公益法人等への寄付でみなし譲渡非課税の特例を受けるには、「寄付された財産が、寄付から2年以内にその法人の公益目的事業の用に直接供されること」などの要件がある。この要件を満たせなかった場合、後から譲渡所得税が課税されるリスクがある。

寄付先の選定リスク

               寄付先の法人の活動実態、財務状況、ガバナンスなどを慎重に見極める必要がある。信頼できない法人に寄付してしまうと、不動産が適切に活用されなかったり、最悪の場合、不当に処分されたりするリスクもある。

寄付先法人の負担能力

               法人側も、寄付を受けると不動産取得税(減免措置あり)や固定資産税(公益目的利用であれば減免措置あり)の負担が生じる。負担能力がない法人は、寄付を受け入れることができない。

 

(6)実務上の流れと結論

①不動産寄付の一般的なステップ

イ.専門家への相談:まずは税理士に相談し、「みなし譲渡所得税」のリスクと非課税特例の適用の可否を確認します。同時に、登記や測量について司法書士や土地家屋調査士にも相談するのが賢明。

ロ.寄付先の選定と事前相談:寄付したい不動産の特性に合わせて寄付先候補(自治体、NPO法人など)を選定し、担当窓口に事前相談を行います。この段階で受け入れの感触を確認。

ハ.調査と問題解決:寄付先の要請に基づき、境界確定測量や担保権の抹消など、寄付の障害となる問題を解決。

二.正式な申込と審査:寄付申出書(寄付採納願)などの正式な書類を提出し、寄付先による審査を受ける。

ホ.契約・登記:審査が通れば、贈与契約を締結し、寄付者負担で所有権移転登記手続きを行う。

 

(7)結論

不動産の寄付は、管理不能な「負動産」を手放す有効な手段の一つであり、社会貢献にも繋がる崇高な行為。「みなし譲渡所得税」という大きな税務リスクや、煩雑な手続き、安くない費用負担が伴う。

安易な判断はせず、まずは税理士等の専門家に相談の上で、寄付先の候補と慎重に協議を進めることが、後悔のない不動産寄付を実現するための鍵となる。

 

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